脊柱管狭窄症と間違われることもある「筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)」とは

脊柱管狭窄症と間違われることもある「筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)」とは

脊柱管狭窄症などの腰痛としばしば誤診されることが多い病気に「筋・筋膜性疼痛症候群(MPS:myofascial pain syndrome)」というものがあるのをご存知でしょうか。筋・筋膜性疼痛症候群は筋肉の炎症がひどくなったもので、簡単に言うと筋肉痛によって引き起こされる病気です。

筋肉痛というと、一般的に数日程度で痛みがおさまるものですから、軽く考えてしまいそうですが、脊柱管狭窄症などの腰痛も、発症の大元には筋肉への過負荷が原因であり、そこから椎間板の変形などが神経根を圧迫するなどで酷い腰痛や下肢のしびれを発症させています。筋肉の損傷は、様々な筋骨格系疾患を引き起こすものですから、筋肉痛・筋肉疲労だからと言って侮ることはできないのです。

ただ、筋・筋膜性疼痛症候群が脊柱管狭窄症などと違ってくるのは、筋・筋膜性疼痛症候群の場合、痛みのポイント自体も筋肉のなかにあるという点です。

通常筋肉は軽度の損傷なら数日、比較的重いものでも数週間というレベルで修復されてくるわけですが、筋肉を休ませないで負荷をかけ続けたり、心身のストレスによって自律神経のバランスが崩れて血行が悪くなると修復が長引き、最悪の場合、こったまま戻らなくなることもあります。腰痛の場合は、ここまでくる前にぎっくり腰などを起こしてしまうでしょうが、筋・筋膜性疼痛症候群の前兆では、筋肉のなかにしこりが出来てここが激痛を引こ起こすポイントになっていくのです。筋・筋膜性疼痛症候群では、このしこりのことを「トリガーポイント」と名付けています。

筋・筋膜性疼痛症候群のしこりは、酷いものだと手などで圧迫しただけで激痛を感じるようになるのですが、痛みはしこり以外にも関連痛として広がるというのが筋・筋膜性疼痛症候群の特徴です。
下半身や背中に強い痛みがあり、脊柱管狭窄症か椎間板ヘルニアを疑ってレントゲンをとっても、腰椎周辺に異常が見られず、しばらく痛み止めなどで対処していたら、じつは筋・筋膜性疼痛症候群だったという症例が日本でも増えています。原因のつかめない腰痛や背中などの痛みで悩んでいる方は、筋・筋膜性疼痛症候群を疑ってみる必要があるでしょう。

まだ認知度の低い「筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)」

筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)は、1983年に、アメリカの医師Janet G. TravellとDr.David G.Simonsが執筆した『Travell & Simons’ Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual (筋・筋膜性疼痛と機能障害: トリガーポイントマニュアル)』で発表され、診断基準が発表されたのは1990年のことです。したがって国内での認知度はまだ低いという面がありますが、『JMPS筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)研究会』が発足し、筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)にあかるい医師も少しずつ増えています。

筋・筋膜性疼痛症候群の治療は、トリガーポイントへの局所麻酔注射になりますから、診断では、トリガーポイントを正確に触診できるかが重要なカギとなります。国内でも、筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)を正しく診断出来る医師が今後さらに増えていくことに期待したいところです。